苦難の日々をすごす3人
3人の子供たちは、各地から来訪する人々の面会に追われて休む暇も無くなり、ますます辛く大変な思いをするようになりました。
また、13日の奇跡現象を目撃して、子供たちの熱狂的な支持者になった人々が家の前に黒山のようにたかって、願い事を聖母に伝えてもらおうとして大声で呼んだりする為、喧騒と熱気でサントス家もマルト家も夜もろくに眠れぬ日が続きました。
この頃、両家の両親は子供たちの体験を全面的に信じるようになっていたのですが、特にルシアの母親は10月13日にもし奇跡が発生しなかったら大暴動が起こるのではないかと心配していました。
「お母さん、聖母さまはきっと約束を果たしてくださいます。心配する必要はありません」
わずか10歳の娘ルシアはそう言って母親をなだめるのでした。
7万人が目撃した奇跡とは
そして、6回目のコンタクトの10月13日 がやって来ました。
「ファティマの熱い日」
すでに新聞と口コミで、この日に天地がひっくり返るような一大奇跡が発生すると宣伝されていたため、ポルトガル全土は勿論のこと、ヨーロッパ各国からも新聞記者や学者、研究家、聖職者たちが、コバ・ダ・イリアへ詰め掛け、せまい渓谷は信者、懐疑派、野次馬などの大群集で埋まり、渓谷に入りきれない人々は沿道に待機していました。
この日の人出は推定7万人と言われています。
(10万人と言う説もあります。)
あいにくこの日は朝から土砂降りの大雨で、群集は皆ずぶ濡れになり、渓谷の草原は群集の足でぬかるみと化していました。

10月の大雨に打たれて体も冷えているにもかかわらず、一人も帰ることなく3人の子供たちを待ち構えていました。
11時40分頃、子供たちは両親に連れられて姿を現しました。

大群集の祈りの声と賛美歌の歌声が次第に広がって、大斉唱となり、渓谷にこだましています。
正午を過ぎた頃、突然ルシアが叫びました。
「光!あそこに貴婦人さまが!」
そして群集の目に、まずひとつの奇跡が映じた。
煙のような小さなひとむらの白い雲が3人の子供の周囲に湧き出て、次に空中5~6メートルの高さに上昇したのです。
これは大勢の人に目撃されて、あちこちから驚異の声があがりました。
一方、ルシアたちの眼前に出現した聖母は、3人に向かって語りかけました。
(この日はフランシスコにも聖母の姿が見え、声も聞こえたという。)
「私が来たのは、信者が生活を改めて、恥ずかしい罪をおかして主の御心を悲しませないこと、ロザリオの祈りを唱え、罪を悔悟し、償いを果たさねばならぬことを教えるためです。人々が心を改めれば、戦争はやがて終わるでしょう。そして、私は人々の祈りを聞きいれてあげましょう」
聖母は子供たちに別れを告げて、太陽を指さすような身振りをしてから、空中高く太陽の方へ上昇して行きました。
「太陽をごらんなさい!」
ルシアが大声で叫ぶと、群集はいっせいに空を見上げました。
「やーっ、出たぞ!」
「聖母の空艇だ!」
それまでの土砂降りの雨が急に止み、黒雲が割れて青空が展開したかと思うと、見なれぬ“太陽らしきもの”が出現したのでした!
銀白色の円盤状の物体が空に現れてから、急速に車輪のように自転を始め、その周囲に無数の色光を放っています。

(実際の写真)
7万人の大群集から大歓声が湧き起こりました。
「あーっ、動いているぞ!」
「こっちの方向だ!」
輝く大円盤は回転を停止して少し水平に移動したあと、またもとの位置にもどって、ふたたび自転を始め、七色の色光を放射しています。
これが3回くり返されてから、今度はジグザグで下降を始めて、群集の頭上に落下するかのように見えました。

群集の驚異と畏怖の念は頂点に達しました。
「ついに奇跡が発生したぞーっ!」
「ファティマの聖女、マリア!」
「われらに憐れみと祝福を!」

(実際の写真)
ぬかるみのなかにひざまずいて涙を流しながら空を見上げる老人、十字を切りながら大声でロザリオの天使祝詞を唱える老婆、婦人たちの涙声の賛美歌、感きわまって、わけのわからぬ叫び声を上げては、身をくねらせる巡礼者。
コバ・ダ・イリアの7万人の目は空中に釘づけになり、無数の手が上空に向けられています。
約10分間見えた不思議な”太陽らしきもの”はいつともなく姿を消したが、だれひとりとして立ち去ろうとはせず、人々は空中を凝視し続けました。

3人の子供の予告どおりに、コパ・ダ・イリアの上空に驚くべき奇跡が起こり、7万人の人に目撃されたのです。
これを人々は”動く太陽”とか、”ファティマの聖女の乗物”などと呼んだが、物理的に見て太陽が急速に自転したり、空中を可視的に移動するはずはなく、これは明らかに太陽とは別物だと言えます。
まだ続く!
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